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8年目1stQ (4〜6月) Part2 〜 銀狼の想い 〜

《目次っぽいもの》
仇討ち代理?[WR,SL]銀狼の想い[SL]バカンスとジンクス[WR,SL]注釈?



話は、三ヶ月前にさかのぼる。

2月の巡業中に双子の姉・千春からの電話を受けた WRERAの村上千秋は、耳にした驚くべき内容に、食べていたイカのバター焼きを思わず吐き出す羽目になった。

千秋

「何ぃっ! 八島の姐さんが、ウチのあの富沢に負けただぁ!? くだらねぇ冗談言うと承知しねーぞ、千春!?」 *1a

『冗談なんかじゃないさ、千秋! 私もさっき知ったとこだけどよ、何でもあのコスプレ女、TTTとかいうベルト賭けたから初防衛だって、一人で喜んでたらしいぜ?』

「なっ……! よりにもよって、あのおふざけ王座の試合だってえ!?」 *2a

TTT

2月、新日本女子の巡業に参加した富沢レイは、最終日に組まれた八島静香との試合を『TTT王座タイトルマッチ』と勝手に宣言。

新女も八島もほぼ無視を決め込んだものの、八島がまさかの敗北を喫したことで、富沢は TTT王座の(自称)初防衛を果たしたのだった。

「くっ……きっと、根が真面目な姐さんのこった。
富沢のバカさ加減に戦る気が失せて、本気になれなかったに違いねぇぜ!」

『おおかたそんなトコだろーけどよ。 ただ、あのコスプレ女が、私らの姐さんの顔に泥を塗りやがったことには変わりねぇ。 どうするよ、千秋?』

「決まってんだろ! ここはお前にも協力してもらうぜ、千春!」

──時を戻して、5月。

「いいか富沢、今日は私がセコンドについてやるから、大船に乗った気で行けよ!
相手が私の姉貴だからって遠慮することはねぇ。
正々堂々しっかりクリーンに戦って、その TTT王座を防衛してくるんだぜ!」

「は、はい! ……なんか、今日の千秋さんてば変だよねぇ……?」
TTT

三ヶ月ぶりとなる TTT王座防衛戦の相手は、スレイヤー・レスリングの村上千春。

メロディ小鳩やライラ神威とともに WRERAに殴りこんできた千秋の姉との試合は、終始富沢が押されまくる展開となった。

しかし富沢もよく凌いで、終盤にはタランチュラにサソリ固めという、いわば節足動物系関節技の連続で、あわや試合をひっくり返すところまで持ち込んだのだが──そこで、事件は起こった。

「いい気分はそこまでだぜ、富沢!」

「うわあっ! ち、千秋さん、何をっ!?」

セコンドのはずの千秋がリングに上がって自分を蹴り飛ばしたことに、さすがに目を白黒させる富沢。

だが、ニタリと笑う千秋の後ろで、良く似た顔が良く似た笑みで立ち上がったその時、富沢はこの後自分を襲うであろう悲惨な運命を、理由もなく悟ってしまった。

「えっとぉ……でも、いちおー理由とか教えてもらえると嬉しいんですけど……?」

「それはテメェの胸に聞くんだな! 覚悟しやがれ、富沢ぁっ!」

「で、でも心当たりがありすぎてっ! きゃあぁぁぁぁぁぁっ!」

……結局、姉妹から散々に暴行を受けた挙句、試合は(なぜか反則裁定にもならずに)18分28秒、村上千春の勝利に終わった。 *3a

ノーザンライトスープレックスで大の字にノビた顔には、マジック、しかも油性のそれで山ほど落書きをされた上に、
千秋 千春

「お似合いだな、そのザマ!」

「情けねぇ姿を見てもらえてよかったなぁ、富沢」

という暖かい言葉まで姉妹からもらった富沢であった。




5月のスレイヤー・レスリング巡業、最終戦のメインイベント。 *1b

スレイヤーにおける試合では久しぶりに青コーナーで戦ったサンダー龍子は、彼女の勝利を告げるゴングが鳴らされる中、率直な質問を投げかけた。
たった今まで死闘を演じた相手である、フレイア鏡に向けて。

EWA

「なぜだい……鏡さん。 なんでわざわざ、私を挑発するような真似をしてまで、こんな試合を……?」

「……ウフフッ、大したことじゃありませんわ、龍子さん。
とっても些細なことでしたのよ。 ただ、その些細なことが、今のあなたにはわからないのかもしれませんわね……」

それは、4月興行でのこと。

団体内では敵無しとされ、事実シングルでは無敗記録を続けていたサンダー龍子に、フレイア鏡が久方ぶりに土をつけた。 *2b

その試合後に鏡は、昨年秋に龍子が敢行した世界王座連続挑戦──強奪計画と呼ばれた──を引き合いに出した上で、龍子に自らの持つ EWA王座への挑戦を促した。 *3b

それも、半ば、いや完全に、挑発という形をとって。

そして今、二人の間で行なわれた EWA王座選手権試合は、双方が体力を使い果たす激戦の末、龍子が鏡のクレッセント・ヒールを封じての変形STOで勝ちを拾ったのだった。 *4b

「勝つつもりだったのですけど、あなた相手に少々甘かったようですわね。
ともあれ、これで EWAのベルトはあなたのもの。 そのベルト……懐かしくはないかしら?」

「ああ……このベルトは、私が初めて巻いたシングルのベルトだからね。
あれはもう、五年も前になるんだな……」

かつて龍子にも、世界の壁に撥ね返され続けた時期があった。
旗揚げから二年が経った頃。 GWAのローズ・ヒューイットに勝てずもがき苦しみ、団体トップのブレード上原との力の差に歯噛みした、あの時期。

そんな時期に、ヨーロッパの女王、ナスターシャ・ハンから奪ったベルトこそが、EWA王座だったのだ。 *5b

輝くベルトを腰に巻いた時に感じたのは、誇らしげな気持ちと、確かに胸に芽生えた自信、そしてさらに上を目指そうと固めた決意。
そのどれもが、間違いなく今のサンダー龍子を形作る重要なピースとなっている。

「あなただけではありませんわ。
そのベルトを巡る EWAとの駆け引き。 その結果としてのあなたのベルト返上。 石川さんによる再奪取。 何度もの防衛戦。 私の戴冠。 そして今日の試合。 *6b
もはや、私たちの団体とともに歩んできたベルトだと言えるかもしれませんわね。
そんなベルトも……あなたはもう一度、返上なさるというの?」

「……社長と井上さんの命令だ。 仕方ないだろ?」

「仕方ない……ウフフッ、あのサンダー龍子のセリフとは思えませんわね……?」

鏡は、いつもの妖艶なそれとは少し違った笑みを口元に浮かべると、まだダメージの大きい身体を引きずるようにしてリングから降りた。

「残るは GWAと IWWFの王座ですわね。 私もできる限り協力して差し上げますわ。
それでは御機嫌よう、龍子さん……」

「鏡、さん……?」

龍子の身体にも、大きなダメージは残っていた。
しかし、龍子が鏡の後を追わなかったのは、決してそのせいではなかった。

数日後。
EWA認定世界王座のベルトは、スレイヤー・レスリングから EWAへと返還された。

ただし、それは事前の取り決めに従って社長秘書の井上が執り行なったものであり、サンダー龍子が自ら返上の意思を示したのではないことだけは、ここに付け加えておく。




富沢

「ふぅ……みんなと一緒にバカンス行きたかったなぁ……。
今頃みんな、泳いでるんだろうなぁ……はぁ……」

ぱこーーーーん!

「い、痛ぁっ! いきなり何するんですか、越後さん!?」
越後

「何するじゃないよ、富沢!
せっかくチャンスをもらったタイトルマッチだぞ!
その直前に、そんな気の抜けたこと言ってるあんたが悪い!」

「えー。 だって、相手はヨーロッパ最強タッグのハンとクライですよ?
越後さんはともかく、パートナーが私じゃ、さすがに無理ですってば」

「黙れ! 戦う前からそんなことでどうする!?
もし負けたら、お前の部屋のアニメグッズや DVD、全部叩き割ってやるからそう思え!」

「そ、そんな無茶なっ! 横暴ですよぉ!」

──両団体で示し合わせたわけではないが、WRERAとスレイヤー・レスリングはともに、6月は団体挙げての慰安旅行に出るのが近年の通例になっていた。 *1c

ただ、必ずしも選手全員参加というわけではなく、一部の選手は参加せずに他団体の興行に参戦する、あるいはさせられることもあった。

それは貧乏くじを引いたとも言える立場だったが、ここ最近になって、一つのジンクスが両団体でまことしやかに囁かれるようになってきていた。

即ち、『バカンス中にタイトルマッチを組んでもらえれば、勝てる』──と。

検証その一。
NJWP

「おっと、気づけば私もタイトルホルダーか。
クククッ……こいつは、千秋の奴が悔しがりそうだな?」

バカンスの裏で新女に殴りこんだスレイヤーの村上千春とフレイア鏡は、理沙子&ソニック組から NJWPタッグ王座を奪取。
千春は、自身初めてのベルトを手に入れた。 *2c

検証その二。
GWA

「先月、龍子さんにはあのように言いましたけど……
まさかこんなに早く GWA王座を手に入れられるなんて。
ウフフッ、さすがに予想外でしたわ」

フレイア鏡は、さらにソニックキャットとの GWA王座選手権も制し、スレイヤー・レスリングでは初となる GWAのベルトをも手中に収めたのである。 *3c

そして、検証その三。
EWA-T

冒頭でとりあげた WRERAの凸凹タッグが、ナターシャ・ハン&ドリュー・クライの持つ EWAタッグ王座に挑んだ一戦は……。

「……あれ? ……ウソ? ……ホントに?
私たち、勝っちゃったっ……!?」

「よっっっし! 見たか、私の延髄斬り!
富沢もよくやった! ハンの STFに、よく耐えてくれたよ!」

「あは、あははははは。 あのー、越後さん。
EWAタッグって……一応、世界タイトル、ですよね……?」

「一応もなにもあるか! れっきとした世界王座だよ!」

「そ、そうですよね。 あは、あははははははははははは。
……うわぁ、やっちゃったかなぁ、私……?」 *4c

EWAタッグ王座戦は、19分04秒、延髄斬りで越後しのぶ&富沢レイの挑戦者組が勝利。

かくして前述のジンクスは、この一ヶ月でさらに三つもの実例を加えたのである。




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■ 注釈(?) ■
*1a千秋・千春はどちらも八島静香に憧れ、尊敬しているという妄想(一部は公式?)設定です。絡みは少ないですが、6年目4Qもご覧いただければと。
*2a今さらながら TTT王座については、6年目4Q7年目1Q7年目3Q、あたりをご覧ください。
*3aもちろん実際には千秋の乱入などは無く、普通にやって負けてます。
*1b5月のスレイヤーは、中森2pFC、龍子始球式、長崎にグッズショップ、トーニャ・カルロス提携、小鳩プライベートイベント、などが発生。タイトルマッチは、
小鳩のTWWAジュニア三度目の防衛(vs千秋)、
龍子のスレイヤー無差別級十五度目の防衛(vsRIKKA)、
石川&RIKKAのWWPAタッグ初防衛(vs真田桜崎)、でした。
*2b否観戦ですが、フレイアがシングルで龍子をフォールしてます。
*3b龍子の世界王座強奪ミッションについては7年目3Qあたりからご覧いただければと。
*4b29分50秒、龍子が STOで勝利。
双方体力0%になった中で、こちら(フレイア)の打クレッセント・ヒール(踵落とし)を、龍子の投STOで破られました。
*5bハン VS 龍子戦は3年目2Qをご覧ください…というか、選手紹介その2見てもらった方がいいかもしれません。
*6b4年目3Qとか、4年目4Qとか、7年目1Qとか、まあその辺りのお話です。
*1c6月のスレイヤーは、龍子FC、ライラ誕生日、長崎飲食店、龍子プライベートイベントその2、など。バカンスでは永沢が登場。
WRERAでは、めぐみ軽傷(間違いなく前月のライラ戦)、理沙子2pFC、来島CM、市ヶ谷CM、千種CM、秋田グッズショップ、ゆっこプライベートイベントその2、など。バカンスでは千秋が登場してます。
*2c29分00秒、フレイアのジャーマンで勝利してます。
*3c13分35秒、顔面ウォッシュで勝利。国内COM団体では最強のソニックも、フレイアさんには楽勝されました。
*4cこの試合に関しては、一言だけ。
まさか勝てるなんて本気で思いませんでした。
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