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6年目4thQ (1〜3月) Part1 〜 冬の嵐 〜

《目次っぽいもの》
冬の嵐[WR]スレイヤーの奸計[SL]春秋戦国[SL,WR]注釈?



1月中旬。
稼ぎ時の冬休み期間が終わって、WRERAの興行は月の後半まで間が空く。

年末からの事務仕事や挨拶回りも一段落し、WRERAの社長は久しぶりにのんびりとした気分で、昼下がりの缶コーヒーを楽しんでいた。

「市ヶ谷は、今頃メキシコで AACの防衛戦やってるかな……って、向こうは夜中か。
しかし、あいつがいないからでもないだろうが、今月は今のところ平和だな……」 *1A

などと呟いたのが、悪魔の気まぐれを誘ったのか。
突如、廊下をパタパタと急ぐ音が聞こえてきたかと思うと、秘書の霧子が、普段見せない焦りの表情とともに、息せき切って事務所に飛び込んできた。 *2A

「しゃ、社長……大変です! やられました……!」

「何を慌ててるんだね、霧子くん? 君らしくもない。
この世の中、大抵のことは慌てる必要などないものだよ?」

「二ヶ月前にお茶を吹いた方の言葉とも思えませんが……とにかく一大事なんです!
テレビをつけてください、社長!」

社長は面倒くさげに缶コーヒーを置くと、机の端に置かれたリモコンでテレビの電源を入れた。 早口で霧子が指示する通りに、チャンネルボタンを押す。

ひと目でわかる低俗なワイドショー番組が、小さめのテレビに映し出される。
何やらしゃべっているアナウンサーとゲストの後ろに見えるのは、どこかで見たことのある──どころか、よく見知った顔の写真だった。
市ヶ谷

「……市ヶ谷っ?」

まばたきを一つしてから、テロップを読む。

“元・柔道女王、財閥令嬢の人気レスラー、ビューティ市ヶ谷に八百長疑惑!
 非合法プロレス賭博に関わり勝ち星を大金で売買する悪女の正体とは!?”

「なっ!? なにぃ!」

気が動転し、大慌てで立ち上がった社長は、机に身体をぶつけて、缶コーヒーの残りを派手にぶちまけた。

……WRERA社長の平和な昼下がりは、こうして終わりを告げたのであった。




「これは何者かの陰謀ですわっ!!」

市ヶ谷と WRERAを襲った スキャンダル は、彼らにとってまさに青天の霹靂。 *1B

八百長、賭博、黒い関係、男漁りに乱交パーティ、一般人の常識を超えた散財 (これだけは一部事実だ)、とウソで塗り固められた報道は、しかし詳細な調査に基づく事実を巧みに織り交ぜており、

「霧子くん……これは、本当のことじゃないだろうね?」

「社長っっ!!」

と、当の WRERA社長が信じそうになって秘書にハリセンで叩かれるほど、真実味と説得力をそなえたものに仕上がっていた。

折りしも、市ヶ谷はメキシコ遠征中。
海外からの声明で無実と陰謀説を訴えた彼女ではあったが、その間にも国内では尾びれ背びれをつけた噂が広がり、動画サイトでは証拠映像なるものまで登場。

紙面、テレビ、ネットを連日にぎわしたこの話題は、市ヶ谷と WRERAの人気を大きく失墜させるに十分な威力を発揮したのである。

「いかがですか、社長? この井上の『仕上げ』……楽しんでいただけましたか?」

「市ヶ谷選手のスキャンダルを捏造、か。 つくづく敵に回したくない女だよ、君は」

スレイヤー・レスリング社長室。
音を絞ったテレビの中では、今日もワイドショーが市ヶ谷の話題を取り上げている。

「WRERAという出る杭を打つには、このくらいしなければと思いまして。
スキャンダルの怖さは、身をもって知っておりますしね」 *2B

「ふむ。 だが、これだけ騒ぎが大きくなると、プロレス界全体にも飛び火しないかね?」

「そうさせないために、市ヶ谷選手を選んだのです。
このタイプの醜聞なら WRERAと市ヶ谷選手に疑念と非難が集中するのは計算済み。
業界全体に累は及びませんわ。
我々はただ無関係を強調し、WRERAに励ましのコメントでも送っておけば良いのです。
そうすれば……」 市ヶ谷

テレビの映像は変わり、ようやく帰国したらしい市ヶ谷が、記者に囲まれた中で何やら喚いている。
どうやらまた「何者かの陰謀ですわ!」と主張しているようだ。

それを横目に、井上は薄く笑った。

「誰も、私たちスレイヤーによる陰謀だとは、思わないことでしょう」




『ってことは何かい? 今回のスキャンダル騒ぎは、全部あんたんとこの仕業。 スレイヤーの社長の陰謀ってことかい、千春?』

『社長ってよりは、井上って腹黒女秘書の陰謀だろーけどな。 まず間違いないね、千秋』

千春 千秋

井上が聞いたら、絶句どころか泡を吹きそうな会話。

それを携帯電話で交わしているのは、WRERAの村上千秋と、スレイヤーの村上千春だった。

『金目のもの探して……じゃなかった、偶然通りかかった社長室の近くで、その井上って秘書が怪しい電話してんのを聞いちまってさ。
あと、すげぇムカツク大馬鹿だけど、妙に鋭いウチの小鳩って女も、
「市ヶ谷さんも大変ね〜。 井上さんも罪な人だわ。 いひ♪」
……なーんて言ってやがったしな』 *1C

『迷惑な話だね、まったく。
おかげでこっちは、来月の新女殴りこみ予定まで自粛ムードになっちまってんだ。
行けなかったら、千春、お前が責任取れよ?』

『私に言うなよな。 こんな時だからこそむしろ団体のために、とかそれっぽいこと言って出てくりゃいいだろ? なんたって、二人して八島の姐さんと戦えるチャンスなんだぜ』

『まあな。 ぶっちゃけ、団体のことなんて、知ったこっちゃねーけどよ……』

そして、翌月。
二人がかねてから所属団体に希望を出していた、姉妹揃っての新日本女子殴りこみ。
そのお目当ては、二人がレスラーになる前からの憧れであった“リングのカゲ番”“伝説のレディース”・八島静香との対戦だった。 *2C

ETC

「ふん、6人タッグかよ。 どうせならタイマンか、普通に千秋とのタッグでやりたかったね」 *3C

「まったくだね、千春。 しかも、メガライトってヤツは元世界チャンプだろ? いくら八島の姐さんでも、私らの出番あんのかね?」

二人の念願が叶ったのは、八島静香&ミミ吉原&菊池理宇 VS 村上千春&村上千秋&ジェナ・メガライトの 6人タッグ戦。

千春と千秋の思惑はともかく、客観的評価ではメガライトの「一人勝ち」状態。

むしろ千春&千秋という「穴」をどう新女側の三人が攻めるか、が注目された試合だったのだが、始まった勝負は思わぬ展開を見せた。

「あんたの出番は終わりだよ、メガライト!」

「クゥッ……バカな!?」

菊池とミミを寄せ付けず楽勝かと思われたメガライトを、満を持して出てきた八島が圧倒。得意のパイルドライバーも炸裂、そのまま試合を決めにかかる。 *4C

「待ちな! 今度は私らが相手だ。 行くぜ、千春!」

「おう! 地獄のコンビネーション、見せてやろうぜ、千秋!」

そこに割り込んだのが、千春と千秋だった。

二人と八島の間にはまだ歴然とした実力と経験の差があったが、若さと勢い、そして臆せぬ戦いぶりでその差を埋め、試合の流れを引き戻した。

──その後は、菊池やミミの奮起、メガライトの意地もあって、試合は大熱戦の末、時間切れドローに終わる。

勝ちきれなかったことを悔しがる千春と千秋だったが、各々が得意とする裏投げとサッカーボールキックが八島に通用したことと、そして何より試合後に、 八島

「あんたたち、いい根性だね。 気に入ったよ!」

──と八島がかけてくれた言葉は、二人の胸に確かな満足感を残したのだった。




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■ 注釈(?) ■
*1A1月は AAC世界ヘビー遠征防衛戦の月です。
*2Aゲーム中では、霧子さんの焦った顔なんて見れませんからね…
*1B1月、ついに WRERAでもスキャンダル発生です。
市ヶ谷人気がS→Aに下がりました。Aまでで済んだのは、さすが市ヶ谷様は根強い人気というところでしょうか?
*2Bスレイヤーでは、5年目1Qにスキャンダルを食らってます。
*1C秘書・井上の「刺客」として、市ヶ谷を陥れる工作に小鳩が加担する…なんてネタも考えましたが、小鳩を悪人にするのは抵抗があったのでやめました。
…「愛」で悪人やってたりしませんよね?
*2Cもうちょっと早く実現したかったのですが、そこは資質Dの村上シスターズ。なかなか八島さんと試合できる程度まで成長してくれず、機会を逃してました。
あ、三人がどこかで出会ってたとか、憧れるきっかけは何だったかとか、そういう深めの妄想設定は考えてません。
*3CCOMもこういう時は気がききません。
*4C実際、八島がメガライトを圧倒してました。
まあ、八島さんも評価値1051あるので、カード次第ではメガライトにだって普通に勝ちます。
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