「おめでとう。いい試合だったわね! 先を越されたみたいでちょっと悔しいけど、今日は祝ってあげるわ」
「ジャニス…ありがとう。これで自信が付いたわよ。日本に戻って、思いきり暴れてやるわ!」
「あ、そうそう。その日本から、はるみ宛に手紙が来てたわよ。ロッカーの中に入れておいたわ。もしかして、ボーイフレンドからかな?」
「…え!? そ、そんな人いないわよ! …えーと、誰からかな。……! 上原さんからだ!」
「…ウエハラ? 何だか聞き覚えのある名前ね」
「…上原さんていうのは、私の師匠なのよ…! 私にプロレスを教えてくれた人なの!」
「ワアット? はるみのマスターなんだ? それで、何て書いてあるの?」
「う、うん……上原さん、今度新しい団体を旗揚げするんだ…! 是非私に参加して欲しいって…そう書いてある」
「オー、ワンダフル! だったら、はるみはその団体に行くべきじゃない?」
「え?」
「こういう時のために、はるみは強くなろうとしてたんじゃないの?
もちろんレスラーなんだから、強くなるのは当たり前だけど、はるみの場合はそれに加えて、何かのために強くなろうとしてるんじゃないかって思ってたのよ。その“何か”っていうのは、このことなんじゃないの?」
「………」
「どうするの、はるみ。決めるなら今よ」
「やっぱり…やめとく。
もちろん上原さんのところには行きたいけど、行ってしまうと、結局上原さんを頼ってしまうかもしれない。もう私は、上原さんという居心地のいい“巣”から飛び出していかないといけないのよ…きっと上原さんも、分かってくれると思う…」
「…そう。そこまで考えてのことなら、もうあたしも何も言わない。でも、マスター・ウエハラもいい生徒を持ったね」
「私は、もうすぐ新女に戻るわ。でもそれまで、まだもうしばらく、よろしくお願いね。ジャニス」
「オフコース、はるみ」
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