「…リングがない…上原さん! これは一体…!?」
「ごめん、はるみ…。もうここでは練習ができなくなっちゃったの。練習だけじゃない、もう一緒に試合をすることも…」
「まさか…会社が? た、確かに最近はお客さんの入りが今一つでしたけど…」
「最後まで頑張ってみたんだけど、私の力が足りなかったの。せっかくみんなでここまでやってきたのにこんな形になってしまって、本当に申し訳ないと思ってるわ…」
「…そんな、上原さん…上原さんだけの責任じゃないですよ」
「他のみんなは、もうそれぞれ身の振り方を決めてるわ。フリーになる者、他の団体に行く者…紹介状くらいは書いてあげられるしね」
「上原さんは…どうするんですか?」
「私は以前いた団体のリングに上がろうと思ってる。はるみ、あなたはどうする?」
「…私、新日本女子のテストを受けてみようと思います」
「テストを? 新女なら私も付き合いが深いから、わざわざテストなんて…」
「いえ、一から出直しするつもりで、練習生の頃の気持ちに帰って、やり直してみたいんです」
「なるほどね。…はるみはまだ若いんだし、それもいいかもしれないわ。それじゃ、次に会うのは新女の会場ってことになるかもね」
「そうですね。その時は上原さんのファイト、違った立場から見させてもらいます」
「…はるみ、私はね、あなただったら日本マットの頂点に立ってもおかしくないって思ってるの。祐希子や市ヶ谷を見てきた私が言うんだから、間違いない。だから、小さなことで満足せずに、大きな目標を目指して欲しい…それだけは忘れないで」
「は…はい」
「それじゃ…ひとまず、お別れね。早く新女のマットで、私と戦えるところまで上がってきなさいよ、はるみ?」
「はい! ありがとうございました、上原さん!」
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