「くうっ……私が、こんな負け方を……」
「フッフッフ。 この私を見くびった代償……高くついたな」
年が明けた 1月のスレイヤー巡業は、全六戦中四戦にタイトルマッチが組まれる豪華シリーズ。 *1A
そのタイトルマッチ初戦は、フレイア鏡 VS ダークスターカオスの WWPA王座戦だった。
鏡にとっては正念場だが、それだけの力をつけてきている彼女は、カオス相手でも恐れることなく前に出た。
体力差とパワー差は手数で埋め、ここぞの一撃──半回転でカオスの視界外から襲うクレッセントヒールに賭ける鏡。
その狙いは図に当たり、カオスは大きなダメージと流血を強いられるのだが──
「お前は、眠れる獅子を起こしたのだ!」
リミッターが外れたのか。カオスは、フレイアの美しい銀髪を荒々しく引き回すと豪快なジャイアントスイングで放り投げ、さらには垂直落下式バックドロップ二連発。
フレイアに自分の過ちを後悔させる間も与えない怒涛の寄せで、カオスは最強外国人選手の矜持を示したのであった。 *2A
「あぁ。フレイア先輩、負けてしまったのね。 小鳩、悲しいわ……」
「お前、本当はぜんっぜん悲しがってねぇだろ。 ──ま、すぐに本心から悲しがらせてやるさ。 ギッタギタにしてベルト奪って、質に入れてやるよ!」
「まあ、質に入れるなんてダメよ。 今どき、ネットオークションの方が高く売れるのよ?」
「……ほんっとに調子狂う奴だな、お前」
いまいち噛みあわないメロディ小鳩と村上千春。
この二人の対決に賭けられたベルトは、WWCA世界ジュニア王座であった。

「テメェには……ムカついてたんだよ!」
一ヶ月とはいえ小鳩は後輩。 *3A
その小鳩に先にタイトルを取られたことは、千春のプライドを少なからず傷つけていたのだろう。
その衝動を、ヘッドバッドやエルボー、さらには得意とするサッカーボールキックに乗せて、千春は小鳩を攻めまくった。
「ぶっ壊れなっ!」
「いひ♪ そうはいかないの」
間一髪、二発目のサッカーボールキックからスルリと身をかわすとロープに走り、小鳩のお家芸、メロディ・スタンプ。
ぽよよん、とノンキな音が出そうな技はしかし、意外なほど相手にダメージを与える。
「なっ!? ば、バカな!?」
「うふふ。 みんなそう言うのよね。 そぉれ♪」
容赦ない……と言えるのだろうか。
再度のメロディ・スタンプで、小鳩は先輩・千春から WWCA世界ジュニアベルトを守りぬいたのである。 *4A

「もうちょっと楽しみたかったかナ?」
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