翌日。
ベルトを取ったからって気を抜いていられない、と早朝のジムに顔を出しためぐみは、彼女よりも早くから汗を流していた千種の姿を目にした。
「すごいねめぐみ、世界チャンピオンだもん」
「ありがとう。でも、このベルトは祐希子さんのおかげで取れたようなもんだからね」
「…ねえ、スパーリングしない? 昔は良くやってたよね。道場に居残ってさ」
「そういえば、最近は二人でスパーリングすることも少なくなってたね…。よし、それじゃいっちょ、いい汗かこうか!」
ただの練習、ただのスパーリング。
そのはずが、千種の真剣な目を見ためぐみも、いつしか本気を出していく。
例えお遊びでも、リングの上では誰にも負けない。それが武藤めぐみの信条。それでも、今回勝利を奪ったのは千種の方だった。
「…手を抜いた…?」
「!! バカなこと言わないで! あたしがそんなことすると思う? …そんなことして千種が喜ぶなんて、あたしが考えると思ってるの!?」
「ごめん…めぐみがそんなことするはずないよね。あたしどうかしてた…」
「…千種」
「あはは。大丈夫。もうイジけてふさぎこんだりしないよ、あたし。 めぐみに怒られて、なんかモヤモヤしたモンが全部どこかへいっちゃった。
あたし、一からやり直してみる。初心に返って、また頑張ってみる。
だからめぐみも今以上にがんばって、次はシングルの世界王者を目指してね!」
「うん! 約束するよ、千種!」
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