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トリプル・クラウン 〜受け継ぎし者〜


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《三冠王者決定!!
全世界注目の三冠統一トーナメント『アテナ・スーパーノヴァ』を制し、史上初の三冠王者となったのは何とこの選手!
将来の新女を背負って立つ新星、ソニア稲垣でしたあ!》

初戦でマイティ祐希子との紙一重の戦いを制したソニアは、その余勢を駆って、サンダー龍子、草薙ひよこ、木村華鳥を次々と撃破。一気にトーナメント優勝まで上り詰めた。

《この三冠王者は文字どおりプロレス界の頂点! その頂点に真に相応しいレスラーになれるかどうかは、これからの彼女次第ですが…おおっと! リング上のソニア稲垣、何やらアピールだあ!》

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「祐希子さん! このベルトはあなたに勝って防衛しないと価値がありません! 最初の防衛戦の相手は、あなたを指名します!」


…それはトーナメント初戦、ソニアが祐希子に勝利した、その直後のこと。

「祐希子さん…ありがとうございました! トーナメント、祐希子さんのためにも頑張ってきます!」

「あたしのためじゃなく、自分のために頑張ってきなさい。このトーナメントの勝者は歴史に名を残すんだからね。あんたの名前は、それに値するだけのものになってるわよ。

…もう教えることはないわねえ。何か安心しちゃった。いつあたしがいなくなっても大丈夫だね」

「…え? 祐希子さん…まさか…」

「フフ…いつか記者さんが言ってたな。あたしはフラッと突然プロレス界へ現れたんで、いなくなる時も突然なんじゃないかってね」

「待って下さい! あたし、今回は祐希子さんに勝てたけど、祐希子さんを越えたなんてこれっぽっちも思ってない。ダメですよ祐希子さん! たとえ他のみんながいいって言っても、あたしが許しません!」

「はいはい、わかってるわよ。ちょっと言ってみただけじゃない」

「…ダメですからね…ホントに…」

「…うん、分かってるって」


《さあ、ついにやってまいりました、三冠王座防衛戦!
初代三冠王者、”弟子”ソニア稲垣に挑むのは、”師匠”マイティ祐希子!
師弟関係にあるこの二人の三冠王座を賭けたこの一戦は、大変な試合になる予感がビシビシとしてまいります!
果たしてこの勝負の結果はどうなるのでしょうか!》

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「…ソニア」

「祐希子さん…」

「とうとうアナタと最高の舞台で戦えるときが来たわ。たぶん、あなたをこの世界に誘ったときに何となく予感してたんだと思う。この日のことを」

「…祐希子さん、あたし、負けません!」

「ウフフ、とても楽しいよ、ソニア…!」


そして…
誰もが終わって欲しくないと願った試合にも
終わりの時がやってくる…


《三冠王座防衛ぃぃぃ!!!
三冠王座を巡るタイトルマッチに舞台を移した注目の師弟対決は、王者・ソニア稲垣の見事な防衛で幕を閉じました!》

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《見事な勝利でした! 事実上、現在のマット界最強を決めるこの三冠戦でのこの勝利、素晴らしいの一語です!
敗れたとはいえ、祐希子選手も愛弟子の成長ぶりは嬉しいでしょう!》


「…ソニア、強くなったな…誰が見ても立派なチャンピオンだ。

うん…あたしがドラゴン藤子にもらったものは、全部あいつに渡し終えた…

みんなこうやって“女神さまの落とし物”に受け渡していくんだな…きっと…」

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「祐希子さん…今日はありがとうございました!」

「ははっ、やーられちゃったあ。強くなったね、ソニア」

「運が良かっただけです。次にやったら分かんないですよ」

「今のあんたは、そんなに簡単に倒せる相手じゃないよ。三冠王者なんだから自信持たなきゃね」

「…でも、あたし祐希子さんを追い越したなんてこれっぽっちも思ってないです。
確かにこうして祐希子さんに勝てましたけど、でもそれだけです。まだあたしは、祐希子さんに全然及びませんよ」

「ははっ、そう言ってくれるのは嬉しいわ。
でもね、あんたはあたしが渡そうと思ってたものをしっかりと受け継いでくれてる。だからもう何の心配もいらない。

…もしあたしに役目があったとするなら、それは今日の試合で全うした。
あんたもいつか分かると思う…分かったら、その時は自分で考えればいいよ」

「何なんですか役目って…全うしたってどういうことですか!? 祐希子さん!?」


「来島…」

「…何だ、来てたのか、南…」

「あたしだけじゃないわ。山田も龍子も羽田も…菊池も会場に来てるわ…」

「オレもさっき上原さんを見かけたよ。…みんな何か感じてたんだな。今日の試合は見届けなきゃいけないってよ…」

「…市ヶ谷?」

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「…まったく、最後の最後まで忌々しい田舎娘ですわね。このわたくしの見ている前であのような小娘に負けてしまうなどと…
あんな小娘から奪う三冠王座など、何の意味もございませんわ!」

「…」

「…やっぱり寂しいのかね…あいつも」


《マイティ祐希子、退場します! 敗れたとはいえ、さすがの戦いを見せてくれましたね、理沙子さん!》

「…マイティ祐希子選手の姿…みなさん、よく目に焼き付けておいて下さい…」

《…は?》

「マイティ祐希子というプロレスラーは、ある日突然私たちの前に現れました。まるで天から降り立ったように…
彼女がこれからどこへ行くのか…分かりません。もしかすると、本当に天に帰ってしまうのかも知れませんね…」

《え…!? そ…それは一体…!?》

「…フフ…それは冗談ですけど…でも、私たちには彼女の残していってくれた素晴らしいチャンピオンがいます。
これからは彼女が私たちに素晴らしいファイトを見せてくれるでしょう!」

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「…祐希子さん…あたしも…いつか分かるときが来ますか…」

“炎の女帝”
“無敵の女神”
“完全無欠のエース”

デビュー以来、マイティ祐希子に冠されてきた称号は数多い。
しかしその多さはとりもなおさず、一言ではとても言い表せない、レスラー・マイティ祐希子の底の知れなさを雄弁に物語っていた。

…その後、マイティ祐希子の姿をリング上で見た者は、誰もいない…



〜 The End, or Make your story in "Survivor" series. 〜


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