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The Carnival! : Semifinal 〜 準決勝 〜

《目次っぽいもの》
The Carnival : タッグ準決勝シングル準決勝注釈?



第二回エンジェルウィング・チャンピオン・カーニバル、準決勝。

タッグ・シングルともに最終決戦に臨む椅子二つを争う、熾烈なる戦いが今、幕を開ける。



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「オーッホッホッホ! またあなたたちですの?
NAタッグの頃から、何度も何度も性懲りも無く。
今回も叩き潰してさしあげますわよ!」 *a1

「言ってなよ、市ヶ谷!
ああそうさ。 確かに俺たちは何度も負けたよ。
だけどな、だからこそ今度は俺たちが勝つのさ!」

タッグ準決勝第一試合は、WRERAの一時代を代表する名タッグ同士の対決。

ともに輝かしい実績を誇るが、大会までの対戦成績も、大会に入ってここまでの道のりも、桜井千里&ビューティ市ヶ谷組がマイティ祐希子&ボンバー来島組を上回る。

この試合でも、先陣を切った祐希子が早々に千里得意のハイキックを受け、来島も市ヶ谷のビューティボムを喰らって、元 NAタッグ王者が“アンタッチャブル”とまで称えられた実力を見せ付けた。

「負けるか……ってんだ! 次のシングル、祐希子に弾みをつけるためにもな!」

自らは敗れたが、親友の祐希子はシングルで勝ち残り、次はあの龍子との対戦だ。
ここまで苦戦続きの祐希子の流れを変えるためにもと、来島はリスク承知で反撃に出た。

「ぶっとんじまいなっ!」

千里に叩き込まれた、来島必殺のナパームラリアット。
たまらず千里は市ヶ谷に替わり、来島も盟友・祐希子に命運を託す。

「恵理っ! あんたの頑張り、無駄にはしないわよ!」

JOサイクロン。
さらに続くダイヤモンドカッター、ノーザンライトスープレックスで、市ヶ谷の肩は2.9までマットについた。

「これで終わりよ、市ヶ谷!」

「あいにくです! これはタッグですよ、祐希子さん!」

千里が絶妙のカットからタッチ。 そのまま市ヶ谷とのWパイルドライバーに繋げると、掌底で今度は祐希子から、カウント2.9までを奪った。

「だったら、俺の出番だなっ!」

交替した来島がリング中央で卍固めに千里を捕らえる。
これは終わったか──と思われたが、千里はギブアップすることなく、何とか脱出にこぎつけた。

「となれば、やはり最後は私ですわね! オーッホッホッホ!」

二転三転した勝負、その最後を飾ったのは、市ヶ谷の裏拳だった。
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タッグ決勝、その栄えあるチケットの一枚目は、千里と市ヶ谷の手に渡ったのである。

  桜井千里 (49分46秒 裏拳) マイティ祐希子  
○ ビューティ市ヶ谷ボンバー来島 ×



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「千種、準備はいいわね?」

「うん。 気持ちも身体も、バッチリだよ!
あと二つ、勝って二人で、金メダルもらっちゃおうね!」

「…永沢…」

「わかってますよ〜、森嶋先輩!
二ヶ月前のようには、いかない! イカナイ!」

この 1月に行なわれた NAタッグ王座戦と、同じ顔ぶれ。 *a2
“王者組”のめぐみと千種はその時の再現を、“挑戦者組”の森嶋と永沢は反対の結果を導くべく、今それぞれの死力を尽くす。

「先手を……取る!」

武藤めぐみのフライングニールキック。
数々の強敵を葬ってきた、返し技を許さない芸術的な必殺技が、序盤から森嶋に襲い掛かる。

「…それは、見切ったわ…!」

森嶋は、なんと前に出た。
必殺の蹴り足が威力を生む前に空中で捕らえ、あろうことかそのまま抱えて SSDを叩き込む。 いきなりの荒技に、会場からも熱い驚愕と声援が飛んだ。 *a3

「…機先は制した。 永沢…!」

「はい! 今日もバッチリ、決めちゃうよ!」

互いの交替早々、今度は永沢のタイガースープレックスが千種に決まる。
序盤戦を制したのは、間違いなく森嶋と永沢の方だった。

「だけどそれでも! 試合は終わるまでわかりませんよ!」

千種渾身のバックドロップが、永沢の勢いを止めた。
めぐみも森嶋相手に打撃や飛び技で攻め、さらにはベストタッグの本領発揮、合体技で序盤の不利を取り戻したどころか、ニーリフトで森嶋からカウント2.8を奪った。

「行けるわ! 行ってみせる!」

「…そうはいかない。 見切ったと、言った…!」

再びめぐみに炸裂した、森嶋の SSD。
さらにWパイルドライバーで入ったカウントは2.9。
第一試合と同様、40分を越えてニアフォール合戦に入り、終わりの読めない展開が続く。

「OK、オッケー! 勝負は私が決めます!」

「いえ、そうはいきませんから!」

永沢のスペースローリングエルボー、千種のフロントスープレックス二連発。
それぞれのフォールも、やはり2.8止まり。
決着は、それぞれが信じるパートナーの手に託された。

「…私が……勝つわ…!」

「違う! 勝つのは、私たち!」

生死を分けたのは、タッグとしての経験の差か。
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めぐみと千種のWパワーボムこそ永沢のカットが間に合ったが、畳み掛けるめぐみのフェイスクラッシャーが、もう一枚の決勝進出、そのチケットの行方を決めたのだった。

× 森嶋亜里沙 (47分03秒 フェイスクラッシャー) 武藤めぐみ ○
  永沢舞結城千種  




死闘を制して決勝進出を決めたタッグチームは、桜井千里&ビューティ市ヶ谷組と、武藤めぐみ&結城千種組。

前・NAタッグ王者と現・NAタッグ王者がその実力を見せつけるとともに、決勝の場で再び雌雄を決することとなったのである。

その前に行なわれるのは、シングルの準決勝。

ここ数年のプロレス界をリードし続けてきた二人の女神・マイティ祐希子とサンダー龍子、そして、タッグ決勝でも顔を合わせる桜井千里と結城千種が、頂点への挑戦権を賭けたリングに上がる。



「祐希子……私は、ここまで来たよ。 あの夜、言ったとおりにさ」 *b1

光に満ちた、リング中央。
サンダー龍子は、自分より一足遅れて歩いてきた宿敵・マイティ祐希子に声を掛けた。
感慨深げな響きの中にも、不敵な闘志、そして必勝の信念が、色濃く刻み込まれている。

「私は、今度こそあんたを倒してみせる。 これも、あの夜に言ったとおりにね。
この大会、あんたは調子悪いみたいだけど、だからって油断も遠慮もしない。
ただ……できることなら、本調子のあんたに出てきてほしいけどな」

熱い想いを静かに語る龍子の前で、対する祐希子は、無言。
龍子の視線を避けるかのようなうつむき加減は、“炎の女帝”には決してふさわしくない弱気にも見える態度だったが、龍子の話が終わると、その唇が小さく動いた。

「あのさ、龍子……」

「ん?」

「あたし……忘れてたの。 思い出したのよ。 この前のフレイアさんとの試合で……さ」

「なにを、だい?」

軽く訊いた龍子の呼吸が、止まった。
龍子に向けて上げられた、祐希子の顔。 その中で炎のように熱く燃えて輝く、獣のような瞳を目の当たりにして──

「負けることの、怖さ。 絶対に負けたくないって、想い。
ここんとこのあたしが忘れちゃってた気持ちを、思い出せたの。 だから──」

怯えにも似た、しかし決してそうではない震えが、龍子の全身を巡り、血を滾らせた。
その眼前で、祐希子が笑う。

「だから、あんたにだって、絶っ対に負けてやんないわよ!!」

それこそが、龍子が生涯をかけても倒したいと願う、最強の戦士の笑顔だった。


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──“無敵の女神”同士の決戦は、文字通り互角の序盤・中盤戦から、シャイニングウィザードで龍子の意識を飛ばした祐希子がすかさずローリングクラッチホールドで丸め込み、カウント3を奪い去った。

あっけないとも言える、ハイペースな電撃戦。 *b2

それを制した“炎の女帝”が一人歩み去る姿を、敗れた“反逆の女神”は、一言も発することなく見送っていた。

その表情が湛える感情の色は、見つめる者たちの誰にとっても、正しい判断がつかないものであった。

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○ マイティ祐希子 −(14分19秒 ローリングCホールド)− サンダー龍子 ×



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「あのー、千里さん。
千里さんと、こんな形で戦うのって、初めてですよねっ」 *b3

「『こんな形』……?」

「何かを賭けた、シングルの舞台で。
私、千里さんと、それから祐希子さんとも、ずっとこんな形で戦ってみたかったんです!
だから、今日はよろしくお願いします!」

千種が目を輝かせたまま破顔したところで、千里は背を向けた。
決して千種を避けたわけではなく、試合開始のゴングを待つべく一旦コーナーへと戻るためだ。 そんな千里に、千種の決意に満ちた声が届いた。

「私、勝ちますからね! 千里さん!」

ゴングが、鳴った。

自らの決意と、セコンドについた親友・めぐみの声に押されて、千種は一気に前に出た。
アームホイップ、ショルダータックル、そして──

「今の私の力、見てください!!」

千里のエルボーに鋭く潜りこんでの、バックドロップ。
序盤のペースは、千種が握った。
対する千里は、明らかに動きが重い。
それならこのまま行くだけと、千種は千里をロープに振って、ジャンピングニーを突き刺そうとする。

「──甘いっ!」

返し技から、ドロップキックに、ソバット二発。
動きが重いと見えたのは、様子見とカウンター狙いだったのか。
千里はさすがに百戦錬磨。 技を集めて、瞬く間に千種からペースを奪い取った。

「あなたに──あなたたちに、まだ譲るつもりはない!」

それは、格上という立場のことか、一足先に決勝進出を決めたマイティ祐希子に挑む権利のことか、それともその先に見据えた最強の座のことか。

いずれにおいても重要な鍵となることは間違いない千里の切り札・ハイキックが、狙い違わず千種の頭部を捉えて、彼女の膝をマットに落とす。

「千種──っ!!」

めぐみの声が、落ちようとしていた千種の膝と、彼女自身を踏みとどまらせた。
どちらかといえば童顔な顔立ちを誰にも見せたことのないような鬼の形相に変えて、千里に、おそらく彼女にとっては過去最強の相手に、必死でしがみついていく。

「約束を……守るの! めぐみのためにも、私は、負けられない! 勝つんだから!」

これだけは世界の誰にも譲らない千種の投げ技、ジャンボスープレックス、フロントスープレックス、ノーザンライトスープレックスが、千里の身体を何度も浮かせ、マットに叩きつけた。
そして千種が最後に狙うは、伝家の宝刀・バックドロップ──しかし、その身体が千里の背を捕らえるより早く、無情にも脇腹に叩き込まれた迅雷の一撃。

「……武藤にも、言った」

千里は、重いミドルキックによろめく千種を支えるかのように掴むと、鋭い眼光とともに、残る言葉を言い放った。

「約束を守るため──そんな強さでは、私に勝てない!」 *b4

不知火、スクラップバスター。 とどめはノーザンライトスープレックス。

最後は相手が得意とする投げ技で、IWWF世界王者・桜井千里が EWA世界王者・結城千種を破り、大会決勝戦・最後のキップを手中におさめたのである。

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○ 桜井千里 −(16分09秒 ノーザンLスープレックス)− 結城千種 ×




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■ 注釈(?) ■
*a1本文ではあまり取り上げていませんが、ゆっこ&来島は三度ほど桜井&市ヶ谷の NAタッグに挑戦して全敗。
まあ、AUTOや否観戦のノンタイトル戦では何度も勝ってますけど。
*a210年目4Qをご覧いただければと。
*a3めぐみの必殺カードを、森嶋が自分の必殺カードで潰しました。
*b1決勝トーナメント前のひとコマです。
*b2体力30%vs30%から、ローリングクラッチホールド一発でまさかのカウント3。
はっきり言ってしまうと、拍子抜けしちゃった決着でした…。姐御ぉーっ!
*b3そういえばシングルのタイトルマッチを一度もやってない顔合わせ。
11年目をやっていれば、EWAや IWWFのベルトを賭けて戦ったことでしょうけど。
*b4桜井vsめぐみについては、10年目2Qにて。
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